弁護士 猪野亨のブログ |

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司法試験合格者数が2000人を超えたことについて

2013.09.12 Thu

13:14:22

 今年の司法試験合格発表が9月10日にありました。
 合格者数は2049名と今年も2000名を超えました。極めて問題のある合格者数です。
 法科大学院制度擁護のためだけの司法試験合格数の維持は極めて問題です。
 あの法科大学院制度を擁護する立場の日弁連ですらも今回の司法試験合格数については「平成25年司法試験最終合格発表に関する会長談話」の中で「急増ペースに沿うものであり極めて遺憾」としました。

 先般7月16日には法曹養成関係閣僚会議において3000人を目標を撤回したばかりですが、それ以前からこの3000人目標については現実味がないと酷評され(司法審意見書が出された2001年6月の時点で予想されていたことですが、それはさておき。)、2012年4月には総務省が公表した評価においても、次のように述べられていました。
3,000人の合格目標は未達成であるが、国民の立場からは、未達成による大きな支障は認められない。一方、現在の2,000人規模の増員を吸収する需要の顕在化はなく、弁護士の供給過多により就職難が発生し、OJT不足による質の低下が懸念

 そのためには今年度からは大幅に合格者数を減らすことが必要でした。
 もちろん、それが実現された場合には、現在、司法試験を受験している人たちにとっては多大な負担となります。
 北海道新聞2013年9月11日朝刊記事には、受験者の声として「その場しのぎではなく明確な対策を練ってほしい。受験生をもてあそんでいる気がする。」と紹介されています。
 受験生にとってみれば当たり前のことです。法科大学院がどうなろうが、司法試験合格後の就職があろうがなかろうが自分が合格するかどうかこそが一番の問題だからです。
 その意味では合格者数が「変動」するということになれば自分が合格するかどうかの不安により志望者離れを引き起こす要因の1つにはなります。
 ただ現実問題として2000名は合格させるからという約束などどこにもありません。今回の2000名合格も言ってみれば政策的なものです。
 この水準に達していたから2000名を合格させたというのではなく、最初から2000名を合格させるという政策なのですから、「合格水準に達していたのに落とされた!」という事態は存在し得ません。
 また2000名を合格させてくれるからというだけで法曹を志望するというのも安易でしょう。既に2000名の「法曹」を吸収するだけの社会的需要はありませんし、合格できれば何とかなるという発想であるならば自分さえ合格できればいいんだという発想と同じでしかなく、制度を考える上では検討にも値しません。
 しかも、その根本問題は、法科大学院課程を修了しなければ司法試験を受験できないということにあります。この制度があるから足かせになるのです。

 法科大学院制度にとっても厳しい状態となりました。今回の結果は上位校とそれ以外の差が明確に現れました。
 合格率順の順位表(PDF)
 こうみると、法科大学院制度を維持するにしても10校程度で足りることになります。東京、関西、中部だけということでしょうか。
(北海道大学法科大学院も統廃合の対象??)
 次の表は、合格率順に並べたものに、募集停止を決めたところ、補助金削減の対象になったところに印をつけたものです。
 募集停止、補助金削減校一覧(PDF)

 適正配置といってみたところで、結局は都市部にしか人材は集まりません。
 適正配置と質の確保は両立するものではなく、最初から無理があったのです。
法科大学院 適正配置を考慮した統廃合・定員削減は可能か
 かつて地方の弁護士会が適正配置を求めて共同声明を出したことがありました。
法科大学院の地域適正配置についての11弁護士会会長共同声明
 ここで名前が上がっているのは、
静岡県弁護士会、長野県弁護士会、新潟県弁護士会、広島弁護士会
島根県弁護士会、熊本県弁護士会、鹿児島県弁護士会、宮崎県弁護士会
沖縄弁護士会、香川県弁護士会、愛媛弁護士会
ですが、この単位会があるところの法科大学院をピックアップすると、次の表です。

順位補助金削減校最終合格合格率
26新潟大法科大学院1018.9%
27広島大法科大学院1918.8%
28琉球大法科大学院618.8%
29香川大法科大学院518.5%
34島根大法科大学院416.7%
40熊本大法科大学院714.3%
49信州大法科大学院510.0%
69静岡大法科大学院13.4%
71鹿児島大法科大学院12.9%


 法科大学院制度こそが地方の足かせになっていることを知るべきです。
法科大学院制度こそ地方を崩壊させる

 マスコミの論調では、法科大学院を避け、予備試験に流れる傾向があるのは問題だというものがありますが、全く理解しかねる主張です。
 未だに法科大学院制度の「理念」を振りかざすだけの人たちがいることに驚きますが、美辞麗句だけを並べただけの使い古した「理念」を未だに声高に叫び、法科大学院制度を守りたいというだけのものでしかありません。そもそも法科大学院制度に「理念」など存在しないのです。
法科大学院制度における「プロセス」ってなあに?
 
 法科大学院では人格教育みたいな「理念」が声高に叫ばれていますが、人格教育は、初等教育で行われるべきもので、法科大学院に結びつけること自体、無理があるというか、こじつけも甚だしいものなのです。
 法科大学院廃止に向け、そして司法試験合格者の減員に向けて、一層、がんばりましょう!


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